クリックが消えた、でも検索は増えている
2025年3月、Pew Research CentreがGoogle検索約69,000件を分析したところ、衝撃的な数字が出ました。AIが要約を表示したとき、ユーザーが従来のリンクをクリックする割合はわずか8%。要約が出なかった場合は15%。つまり、AIが「代わりに答えてしまう」だけで、クリック率はほぼ半減するわけです。しかも要約を見たユーザーの4人に1人は、どこもクリックせずにセッションを終えています。
BrightEdgeによれば、AI Overviewsが登場してからの1年でGoogle検索のインプレッション数は49%増えました。それなのにクリック率は約30%落ちています。Seer Interactiveの調査ではさらに厳しい数字も出ていて、AI Overviewsが発動したクエリに限ると、オーガニックのクリック率は1.76%から0.61%へと61%も下落しました。検索は増え、答えは届き、でも誰もサイトには来ない。そういう時代がもう始まっています。
「引用される」ことが新しい露出になった
ここで重要になるのが、AEO(Answer Engine Optimisation)とGEO(Generative Engine Optimisation)の違いです。AEOはシンプルで、AIが「この質問にはこの答え」とスパッと抽出できるよう、コンテンツを構造化する手法です。質問形式の見出し、40〜80語程度の結論先出し段落、FAQやHowToのスキーママークアップ。Googleのフィーチャースニペットや音声検索で引用されることを狙います。
GEOはもう少し広い話です。ChatGPT、Perplexity、GeminiといったRAG型のAIプラットフォームは、複数のソースを統合して回答を生成します。そこで「信頼できる情報源」として認識されるために必要なのが、意味的なコンテンツの厚み、エンティティ情報の充実、そして第三者サイトや専門誌でのブランド言及です。自社サイトをどれだけ磨いても、外部からの引用がなければGEOでは戦えません。
McKinseyの調査(2025年8月、消費者1,927名対象)によると、AIが参照する情報のうち自社ウェブサイトが占める割合はたった5〜10%。残りの90%はパブリッシャー、ユーザー生成コンテンツ、アフィリエイトサイト、レビュープラットフォームから来ています。Googleのスニペットを制覇しても、ChatGPTの回答には一切登場しない、ということが普通に起きています。
引用されたブランドだけが選ばれていく
では、引用されると何が変わるのか。Seer Interactiveの分析では、AI Overviewsに引用されたブランドはそうでないブランドと比べて、オーガニッククリックが35%多く、有料クリックに至っては91%も多いという結果が出ています。可視性の差が、そのまま売上機会の差になりつつあります。
マーケターたちもそれを肌で感じているようです。2026年2月にMarTechが報じたConductorの調査では、デジタルマーケティングリーダーの32%がGEOを今年最優先の取り組みに挙げ、97%が「すでに成果が出ている」と答えています。注目すべきは93%が外注ではなく内製で取り組んでいる点で、AI検索での存在感を他社に委ねるには戦略的リスクが高すぎると判断しているのでしょう。成熟度の高い企業ほどGEOへの投資額が大きく、その差は一度開いてしまうと追いつくのが難しくなります。
今すぐ自分のブランドがAIに見えているか確かめる方法
まず、ChatGPTやPerplexityに「顧客が実際に打ちそうな質問」を入力してみてください。自社が引用されているか、引用されているとしたらどのソース経由か、まったく出てこないなら誰が代わりに出てくるか。それだけで現状が見えます。
その上で、AEOとGEOを両軸で進めます。AEO側では質問応答形式のコンテンツ構造とスキーママークアップ、GEO側ではトピッククラスターの深化と第三者メディアへの露出強化です。既存のSEO基盤は捨てる必要はなく、その上に重ねていく形になります。
生成AIがさらに進化してエージェント型、つまり「ユーザーの代わりに予約や購入まで行う」フェーズに入ると、AIが選ぶブランドと人間が選ぶブランドの境界はさらに曖昧になります。クリック数を成功の指標にしているうちは、その変化に気づかないまま機会を失い続けることになるでしょう。

