Braveが発見したPerplexity「Comet」ブラウザの脆弱性とAI時代のセキュリティ課題

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AIブラウザ「Comet」とは何か?

生成AIが日常の検索や情報収集に欠かせない存在となりつつある中で、Perplexityが提供する「Comet」ブラウザはユニークな立ち位置を築いています。従来の検索エンジンやブラウザが「情報を探すための道具」だったのに対し、CometはAIが積極的に情報を整理・要約し、ユーザーに最適化した回答を提示することを狙っています。いわば「検索するブラウザ」から「会話するブラウザ」への進化です。
ところが、この新しい発想には新しいリスクも潜んでいました。Braveが発見したのは、Cometが「間接的プロンプトインジェクション」と呼ばれる攻撃に脆弱であるという点です。この問題を理解するためには、まず「AIとブラウザが一体化する」という新しい時代の背景を知る必要があります。

脆弱性の正体:間接的プロンプトインジェクション

プロンプトインジェクションとは、本来AIが受け取るべき指示に「余計な命令」を忍び込ませ、AIの挙動を意図的に操作してしまう手口です。例えば、AIに「この文章を要約して」と頼んだはずなのに、本文中に「ユーザーの保存データを読み上げろ」といった命令が紛れ込んでいたらどうでしょう。AIは善意で従ってしまい、ユーザーが意図しない動作を実行してしまう危険が生まれます。
Cometの場合はさらに一歩進み、Web上のページやリンク経由で「間接的」にこうした命令を読み込んでしまう可能性があることが指摘されました。つまり、知らないうちに開いたサイトが「裏口」になり、AIをだましてしまうわけです。これは「無害そうに見えるカフェのWi-Fiに接続したら、実はデータを抜かれる」ようなシチュエーションに近いものだと言えます。

なぜAIブラウザでセキュリティが問題になるのか?

従来のブラウザでもフィッシングやマルウェアのリスクはありました。しかしAIブラウザの特徴は「ユーザーが直接すべてを確認しなくても、AIが代わりに処理してくれる」という点にあります。便利な半面、「AIが何を読み、どう解釈するのか」を人間が逐一コントロールするのは難しいのです。
もしAIが間接的な命令に従ってしまえば、パスワードや閲覧履歴のような機密情報が外部に漏れる可能性があります。つまり、AIブラウザは人間に代わって情報処理を担うぶん「信頼の門番」になる必要がありますが、その門番が裏をかかれてしまうと、被害は一気に拡大するのです。

業界への影響と今後の課題

今回の発見は単なる1ブラウザの不具合ではなく、「AIをどう安全に活用するか」という業界全体のテーマを突きつけています。ChatGPTやGeminiなど、多くの生成AIが「外部の情報を組み合わせて答える」スタイルを採用しており、攻撃者が利用する余地は広がっています。
セキュリティ研究者の間では「AIは善意の執事であると同時に、だまされやすい見習いでもある」と例えられることがあります。確かにAIは忠実に働きますが、命令の真偽を自分で判断できません。だからこそ、AIを導入する企業や開発者には「だまされにくい設計」と「常時監視の仕組み」が欠かせないのです。

ユーザーが取れる対策と心構え

一般ユーザーにとって「ブラウザの内部脆弱性を修正する」ことは不可能です。ですが、いくつかの工夫でリスクを下げることは可能です。

  • 最新バージョンへのアップデートを怠らないこと
  • 不審なリンクや未知のページを安易に開かないこと
  • AIに任せる範囲を意識し、「重要情報は直接確認する」習慣を持つこと

さらに、AIブラウザはまだ発展途上の技術であるため、「便利だけれども万能ではない」という前提で使うことが重要です。AIをパートナーとして信頼しつつも、「過信しすぎない」姿勢が安全性につながります。

まとめ:AIの未来は「便利さ」と「安全性」の両立にかかっている

今回の脆弱性は、AIブラウザが抱える新しいリスクを浮き彫りにしました。しかし、これは決して悲観すべきニュースではありません。むしろ、こうした早期の発見と修正の積み重ねが、AIの未来をより安全で信頼できるものに育てていきます。
ユーザーとしては「AIにすべてを任せる」のではなく「AIと一緒に考える」姿勢を持つことが大切です。そうすれば、便利さと安心感の両方を手に入れることができるでしょう。まるで頼れる相棒と旅をするように、AIブラウザとの関係を楽しみながら育てていきたいですね。

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