生成AIによるデータ収集をワンクリックでブロック
ここ数年で急速に普及した生成AI。便利な反面、私たちのWebサイトにある文章や画像が、知らない間にAIの学習データとして使われていることにモヤモヤした気持ちを抱えている方もいるのではないでしょうか。
そんな声に応える形で、レンタルサーバー大手の「エックスサーバー」が新しい機能をリリースしました。2026年1月7日から提供が開始された「AIクローラー遮断設定」です。
これは、あなたのWebサイトに対して、AIが情報収集のためにアクセスしてくるのをサーバー側でブロックできる機能です。『エックスサーバー』『XServerビジネス』『XServer for WordPress』の全プランが対象で、追加料金なしで利用できます。
エックスサーバー
![]()
XServerビジネス
![]()
XServer for WordPress
![]()
最大の特徴は、難しい知識が一切不要な点です。サーバーの管理パネル(サーバーパネル)から、スイッチをオンにするような感覚でワンクリックで設定が完了します。「自分のコンテンツを勝手にAIに使われたくないけれど、技術的なことはよくわからない」というユーザーにとっては、非常に手軽で強力な選択肢が増えたと言えるでしょう。
そもそも「AIクローラー」は何をしているのか
今回ブロックの対象となる「AIクローラー」とは一体何者でしょうか。簡単に言えば、生成AIが賢くなるための「教材集め」や、ユーザーの質問に答えるための「情報収集」を目的に、インターネット上を自動で巡回しているプログラムのことです。
ChatGPTを提供するOpenAI社や、Geminiを提供するGoogle社、Claudeを提供するAnthropic社など、主要なAI開発企業はそれぞれ独自のクローラーを持っています。彼らは日々、世界中のWebサイトを訪れてはテキストや画像データを収集し、AIモデルの学習に役立てたり、回答を生成する際の情報源として利用したりしています。
エックスサーバーの新機能では、こうした主要な生成AIサービスによるアクセスを一括で遮断します。個別に「このAIはOK、あれはNG」と設定する必要はなく、まとめてシャットアウトできるのがポイントです。
データ利用だけじゃない、AIクローラーが及ぼす「実害」
AIクローラーの議論となると、どうしても「著作権」や「学習への無断利用」といった側面に注目が集まりがちです。しかし、Webサイトの運営者にとっては、より差し迫った物理的な問題も無視できません。それが「サーバーへの負荷」です。
実は最近、一部のAIクローラーが短時間のうちに猛烈な勢いでサイト内のページにアクセスを繰り返し、まるでDDoS攻撃のようにサーバーのリソースを食いつぶしてしまう事例が各所で報告されています。
クローラー側が悪意を持っているわけではなくても、結果としてあなたのサイトの表示が極端に遅くなったり、最悪の場合はサーバーがダウンして、肝心の一般の読者がサイトを見られなくなったりするリスクがあります。レンタルサーバーによっては、こうした過負荷が原因でアクセス制限をかけられてしまう可能性もゼロではありません。
エックスサーバーの今回の機能は、単に「データを守る」だけでなく、こうしたAIクローラーによる「意図せぬ過剰アクセス」から、サイトの安定稼働を守るための防波堤としても機能するのです。
AIへのデータ提供を拒否するメリットとデメリット
では、この機能をオンにすることにはどのような影響があるのでしょうか。明確なメリットと、無視できないデメリットの両方を理解しておく必要があります。
メリットは「データとサーバーを守れること」です。
前述の通り、オリジナルのコンテンツが無断でAIの学習に使われるのを防ぐと同時に、クローラーの大量アクセスによるサーバー負荷を軽減し、サイトの表示速度低下やダウンのリスクを回避できます。特にアクセス数の多い人気サイトや、リソースに限りがある小規模なサイトにとっては大きな安心材料になります。
デメリットは「AI時代における露出の機会を失うこと」です。
ここが非常に重要です。エックスサーバーの公式発表にもある通り、この機能を有効にすると、仕組み上「AI検索機能などで生成AIが回答する際に、情報源として紹介(引用)されなくなる」可能性が高まります。
現在、GoogleのSGE(Search Generative Experience)のように、検索結果の上部にAIが要約した回答を表示する機能が増えています。AIクローラーをブロックするということは、こうした新しい形の検索結果において、あなたのサイトが「参照元」としてリンク付きで紹介されるチャンスを自ら手放すことを意味します。将来的にAI経由のトラフィックが増加していくとすれば、これは大きな機会損失になるかもしれません。
なお、この機能がブロックするのはあくまで「生成AI関連のクローラー」であり、通常のGoogle検索やBing検索の順位を決めるためのクローラー(検索エンジンボット)はブロックしません。その点は安心してください。
あなたのサイトはブロックすべき?判断のポイント
メリットとデメリットを踏まえた上で、結局のところ自分のサイトはどうすべきなのでしょうか。サイトの目的や状況によって、最適な選択は変わってきます。
ブロックを検討した方が良いケース
- 有料コンテンツや個人的な記録など、情報の独自性や権利保護を何よりも重視する場合。
- 過去に原因不明のアクセス過多でサーバーが不安定になった経験がある場合。
- 「とにかく勝手に使われるのが生理的に嫌だ」という場合。
ブロックせず様子を見た方が良いケース
- ブログやメディアなど、一人でも多くの人に情報を見てもらい、拡散されることを目的としている場合。
- 現時点でサーバーの負荷に特に問題を感じていない場合。
- 将来的にAI検索からの流入が重要な集客チャネルになると見込んでいる場合。
設定は簡単だが将来を見据えた選択を
エックスサーバーの今回の機能追加は、Webサイト運営者に「データを提供するか否か」の選択権を非常にわかりやすい形で与えてくれたという点で、大きな意義があります。
設定自体はサーバーパネルにログインし、「AIクローラー遮断設定」の項目から「ONにする」をクリックするだけで完了します。いつでも自由に変更できるので、まずは試験的に導入してみるのも一つの手です。
大切なのは、これが「全か無か」の恒久的な決定ではないということです。AI技術や検索エンジンの仕様は日々変化しています。今はブロックするメリットが大きくても、半年後には状況が変わっているかもしれません。
「データを守る」「サーバーを守る」、そして「将来のアクセス機会を確保する」。それぞれのバランスを考え、現在の自分のサイトにとって何がベストかを判断してみてください。
