ChatGPT定額モデルの終焉とOpenAIが直面する課金の現実

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月額20ドルは、もはや成り立たない

ChatGPTが「一時的なデモ」として公開されたのを知っている人は、意外と少ない。OpenAIのChatGPT責任者ニック・ターリー氏が明かしたのは、あのサービスが「1カ月で終了する予定だった」という驚くべき事実だ。ところが蓋を開けてみれば、世界中のユーザーが殺到し、OpenAIは急遽これを本格製品として育てることを決めた。今の料金体系は、そのパニックの中で「成り行きで」生まれたものだとターリー氏は振り返る。

現在ChatGPTは、無料版、月額20ドルのPlus、月額200ドルのProという三段構えで提供されている。だがターリー氏は、この枠組みがいつまでも続くとは思っていない。3月15日のポッドキャストで彼はこう言い切った。「テクノロジーがこれほど急速に変化しているときに、料金体系が大きく変わらない世界などありえない」と。

電気を使い放題にするのと同じことだ

ターリー氏が使った比喩が鋭い。「いまの時代に使い放題プランを提供することは、電気を使い放題にするようなものかもしれない。それはまったく合理的じゃない」。AIモデルの処理能力は年々上がっているが、その分だけ計算コストも膨らんでいる。ユーザー数が爆発的に増えた今、定額で無制限に提供し続けるビジネスモデルは、構造的に無理が生じている。

OpenAIのCEOサム・アルトマン氏も同じ認識を持っており、「AIは電気のように使った分だけ課金する従量制で販売されるようになる可能性がある」と先週語っていた。大手テック企業が今年だけでAIコンピューティングに数千億ドルを投じようとしているのだから、その回収を「月額20ドルの定額制」に頼るのは、もはや現実的ではない。

課金モデルの「次の形」を各社が模索している

業界全体が一斉に動いている。マイクロソフトのCEOサティア・ナデラ氏は、ユーザー単位ではなく「エージェント単位」での課金を検討していると明かした。AIが単なるツールではなく、自律的に動く「同僚」として機能するようになれば、人間一人ひとりに紐付いた従来のライセンス形態では実態を捉えられないという発想だ。

AnthropicやGoogleはすでに法人向けでトークン単位の従量課金を採用している。入力したテキストと出力されたテキストの量に応じて請求するこのモデルは、使えば使うほどコストが増え、使わなければ無駄がない。ITコンサル大手グローバントも「AI Pods」と呼ぶ月間トークン割り当て型のプランを試験導入しており、サブスクと従量制の中間を狙った形だ。

「アクセスを広げる」という建前と現実

ターリー氏は「私たちの最大の目標は、アクセスの拡大だ」と強調する。定額を払えないユーザーを切り捨てないために、今年2月から広告の試験的導入も始めた。無料でも使えるルートを残しつつ、ヘビーユーザーには相応のコストを負担してもらう——そういう方向性は理解できる。

ただ正直に言えば、従量課金への移行は「アクセスの民主化」というより、使うほど費用がかさむ構造に変わることを意味する。個人ユーザーが毎月どれだけ使ったかを気にしながらAIと向き合う日が来るとしたら、それはGPT-4が登場した頃の興奮とは、だいぶ違う体験になるはずだ。ChatGPTが「成り行き」で生まれたように、次の料金体系もまた、試行錯誤の末に形になっていくのだろう。その結果がユーザーにとって良いものかどうかは、各社のロジックではなく、実際の価格が出てから判断するしかない。

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